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屋久島の高校生のための海と魚に親しむ2日間

自ら魚のいのちを頂く、屋久島の高校生(魚の神経〆のシーン)
自ら魚のいのちを頂く、屋久島の高校生(魚の神経〆のシーン)

高校生活を屋久島で過ごすことに意味があるとしたら


 

 うお泊が島の高校生に向けて企画した「高校生のための海と魚に親しむ2日間」を、2022年12月に実施しました。内容は春田浜海水浴場で磯の生き物の採集観察と同定、遊漁船さかなのもりの釣り体験、漁師の暮らし体験宿ふくの木で自分が釣った魚をさばく体験、屋久島サウスビレッジでアウトドア調理体験と宿泊。1泊2日のプログラムを体験してもらいました。講師はうお泊屋久島の理事でもある鹿児島県姶良市の「くすの木自然館」の浜本麦さん。磯の生き物観察のレクチャーや同定の仕方を指導いただいたり、屋久島の海の豊かさを生物多様性の視点から伝えてもらいました。

 

なぜ私たちが高校生へ向けたプログラムを造成したいと思ったのでしょうか。理由は大きく2つあります。

①高校生という立場から屋久島のことをどう思っているのか知りたかったから。高校生の暮らしの中に海や魚との関わりがあるのかを知りたかったから。

②卒業後、島を出て行くかもしれない高校生に屋久島のことをもっと知ってほしいと思ったから。海や魚と関わる仕事についてや、どんな思いでその仕事に取り組んでいる人がいるのかを知ってほしい。また屋久島が好きな大人と交流してほしいから。

 

 


私は富山県で生まれ、小学校から高校まで、北海道で育ちました。「出身地は?」と聞かれると、正確に答えるのは難しいのですが、学生時代の多くを過ごした「北海道」と答えることにしています。北海道出身と言うと、「北海道いいな〜!行きたいな〜!」「おいしいものがたくさんあるよね!」などといった反応が返ってきます。今になって思えば、北海道は広大で自然豊か、とても魅力的な地域だと感じます。

 

でも、高校生の時の私は「地域」という言葉を意識したこともなく、関心があったのは流行りのファッションと音楽、テレビドラマくらい。今北海道のことを聞かれてもほとんど答えられないくらい地域への関心は無く、とにかく早く高校を卒業して上京し、キラキラとした都会の暮らしを満喫したい、最先端が何でもある東京に住みたいとしか考えていませんでした。

 

もしあの時、地域や社会とのつながりを感じる出会いがあったとしたら。社会に対し、さまざまな思いを持つ大人と関わる機会があったとしたら。生意気だった高校生の時の私に、何かが伝わったかどうかは分かりません。でも、今の私からすると、そういう機会が持てる高校生って羨ましいなと思うのです。

 


私がどんなに屋久島を大好きで、これからも住み続けたいと伝えたところで、島の高校生が高校を卒業し、島を出る選択をすることは、尊重すべきと思うし、応援したいです。現在1歳の息子も、いずれ島を出ていく時が来るだろうなと思っていますし、その時は精一杯、盛大に送り出したいとも思っています。

 

これは私個人の勝手な願いですが、島を出て、どこへ行こうとも、高校生という期間を屋久島で育ったことをぜひ皆さんに誇りに思ってほしいです。そのために、屋久島のことを大好きな大人たちと、なぜ大好きなのか、どんな魅力があるのかを、私たちの得意とする海や魚を使って伝える活動をこれからも続けられたらと思っています。

 

 


今回の参加者からは「屋久島のことを真剣に考えている大人から話を聞けたのがとても嬉しかった」「屋久島の海にどのような生物がいるのか、1匹1匹に大切な意味があると知ることができた。屋久島の海を守っていくためには、生物への影響も考えて開発する必要があると理解できた」「海と山が繋がっているイメージがなかったのでびっくりした。海も山も大切にしないといけないと思った」などといった感想をいただきました。 


編集後記


東京で生まれ育った私自身、自分の地域や故郷の魅力を語って欲しいと言われても、地下鉄の駅が近くて便利とか、住宅街で都会にしては夜は静かとか、コンビニもスーパーも歩いて5分だよくらいしか思い浮かばない。近くの自然と言えば、区画された公園の樹木くらいで、川は全てコンクリートで囲われていた。

 

小学生の頃、夏休みに友達が書いた田舎に帰った時の絵日記を見せてもらい、田舎への憧れを強く抱いていた。なぜそんなに楽しそうに絵日記が書けるのか?一体、田舎に何があるのだろうか?と。東京の真ん中から屋久島へ移住したのは、その時の憧れの反動なのかもしれない。

 

屋久島に移住してつくづく思うのは、人間は自然なしには生きられないということ。この島には、我々人間を支えてくれる自然環境が残っている。そんな島で生まれ育った子どもたちには、この島を出るまでに、ここでしかできない体験をもっとしてもらいたい。そして、自分の身を持って体験したからこそ出てくる言葉で屋久島を表現してもらいたいと思う。みなさんは、自分の故郷を自分の言葉で表現できますか?

 

うお泊屋久島 編集長  ささっちょ
うお泊屋久島 編集長 ささっちょ


うお泊屋久島ってどんな団体?


うお泊(うおはく)とは?

うお=魚 + 泊=宿泊などの体験プログラム、また港を意味する

上記を組み合わせた造語です。

 

どんな仲間たちがいるの?

屋久島で魚を扱う事業者や、

海や川などの水辺で活動する事業者が主なメンバーです。

また鹿児島本土の事業者もいます。

漁師の暮らし体験宿ふくの木 

遊漁船さかなのもり/えびす丸 

(以下あいうえお順)

くんせい屋けい水産 

島結レーベル 

屋久島アウトドアガイド島結

屋久島シェアホステルみなと 

レストランパノラマ

NPO法人くすの木自然館 

 

わたしたちの活動が目指していることについて

この法人は、地域住民や来島者など幅広い層の人々に対し、泳いでいる魚が食卓にあがるまでのストーリーをおいしく・楽しく・分かりやすく伝えることで、魚を育て人々の暮らしを豊かにする自然環境を大切にする心を育み、生産者と消費者、海や魚と地域住民・旅人などを繋ぎ、双方が喜びを分かち合えるような社会をつくることを目指して活動をしています。

 

うお泊屋久島との協働・共催企画のご相談はお気軽にご連絡ください。