日常の食卓に並ぶ食材たちは、どこからやってくるのだろう?
毎日「いただきます」と言って、食卓に並んでいる食事を食べるという日常の風景。
そこに並んでいる食材たちはどこからやってくるのだろう?
魚やお肉は、どんな生き物だったのかを知って食べている子供や大人たちがどのくらいいるのだろう。
私には小学生の息子と娘がいます。
2人とも刺身の状態になった魚を見て、「この魚はアカバラ(屋久島では天然カンパチのことをアカバラという)だね!」と話したり、実際の魚を見る機会も多いので、どんな魚だったのか想像ができます。魚の切り身を見て「この魚は〇〇だよ!」とわかるのは、大人でも少ない気がします。
私たちは屋久島の宮之浦という港町で「レストランパノラマ」という飲食店を営んでいます。屋久島、鹿児島を中心とした野菜、お魚、お肉などの食材を使った創作料理店です。
屋久島の地魚の場合は、漁師さんが船を出して魚を獲り、漁協を通して、地元の魚屋さんが買取り、それを私たち飲食店が買って、捌き、調理して食卓に上がります。私たちの口に入るまで、たくさんの自然や人の関わりがあります。
レストランに行けばすぐに作ってもらった食事を食べることができますが、私たち飲食店のシェフと一緒に、ゼロから食材を獲りに行って、調理をして食べる一連の体験をやってみたいと思い、「ゼロからレストラン」という企画を立ち上げ、NPO法人うお泊屋久島の協力のもと、2022年11月にモニターツアーを開催しました。
現役漁師さんと一緒に船で魚を釣り、仕事で使う道具の話や、釣った魚の締め方を体験します。漁師は自然と隣り合わせの仕事なので、海が時化れば漁に出ることはできません。屋久島で有名な飛び魚や首折れサバの刺身も、屋久島にきたら必ず食べられるわけではありません。
モニターツアーの日は天候が悪く沖までは出られませんでしたが、港の近くを船に乗ってまわりました。湾内でも波はすごかったです。船から降りた後、漁師さんやシェフと一緒に、前もって用意した魚の鱗をとり、3枚に下ろしました。小学生から大人の5名の参加者が上手に捌きました。
ここから調理の開始です。海から拾った流木で火をおこし、地魚のパエリアやアカジョウのしゃぶしゃぶ、オジサンのサラダ、みんなでいろいろなメニューを作りました。作った後はみんなで「いただきます」をします。
いつもより手間や時間はかかりますが、その分美味しさが増したり、自分で作る楽しさ、魚に触れることで命をいただく感覚など、体験の中でなにか感じて、お家でも日々の「いただきます」がより大切な時間になればと思います。
ゼロからレストランは、季節に応じて獲る食材も変わります。
不定期開催にはなりますが、日帰り体験や、2泊で山から海までを楽しめる体験プログラムを案内する予定です。
text by 藤森恵里(レストランパノラマ)
編集後記
この「ゼロからレストラン」という企画に成功という二文字はありません。
あるのは、自然と触れ合う豊かさであり、人の心に触れられる温かさです。
忙しい日常の中を暮らしていると、いかに時間を節約しようか、いかに効率的に生きようか、そんな気持ちが湧いてきてしまいます。このプログラムの大切なことは、”手間や時間はかかりますが…”というフレーズ全て込められています。
一見、無駄だと思ったり、不便だなと思ったりしてしまう、手間暇の中にこそ、人間が生きていく上での本当の豊かさが隠れているのかもしれません。
これからの「ゼロからレストラン」にご期待ください!
うお泊屋久島ってどんな団体?
うお泊(うおはく)とは?
うお=魚 + 泊=宿泊などの体験プログラム、また港を意味する
上記を組み合わせた造語です。
どんな仲間たちがいるの?
屋久島で魚を扱う事業者や、
海や川などの水辺で活動する事業者が主なメンバーです。
また鹿児島本土の事業者もいます。
(以下あいうえお順)
わたしたちの活動が目指していることについて
この法人は、地域住民や来島者など幅広い層の人々に対し、泳いでいる魚が食卓にあがるまでのストーリーをおいしく・楽しく・分かりやすく伝えることで、魚を育て人々の暮らしを豊かにする自然環境を大切にする心を育み、生産者と消費者、海や魚と地域住民・旅人などを繋ぎ、双方が喜びを分かち合えるような社会をつくることを目指して活動をしています。
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